
はじめに:なぜ今、「収益データの理解」が欠かせないのか
ホテルや旅館の運営現場では、「売上が伸びない」「利益が思うように残らない」といった悩みが尽きません。
ここ数年で環境は大きく変化し、インバウンドの回復、旅行者のニーズの多様化に加えて、次のような課題も浮き彫りになっています。
・物価や人件費の上昇
・深刻な人手不足と人材確保の難しさ
・OTA依存の強まりと自社予約率の低下
・ダイナミックプライシングの普及による価格競争の激化
・宿泊者の価格への敏感さの高まり
これまでのように勘や経験だけに頼る運営は、通用しづらくなってきました。これからは、数字に基づいて状況を「見える化」し、収益に直結する判断を下すことが求められます。
そのカギとなるのが、「ADR」「OCC」「RevPAR」といった、ホテル経営の基本となる収益データです。現場のスタッフから経営層まで、共通の指標として活用でき、施設の状況を定量的に把握できます。
本記事では、それぞれの数値の意味や計算方法、改善のヒントをわかりやすくご紹介しております。
「コストは増えるのに、人手は足りない」「この価格で本当に利益が出ているのか?」といった悩みを抱えるすべての施設様にとって、きっと参考になる内容です。
ADR(Average Daily Rate)とは? ― 客室平均単価
ADRってどんな数値?
ADRとは、販売された客室1室あたりの平均宿泊料金のことです。
例えば、50室を販売して売上が100万円だった場合、ADRは20,000円になります。
単純な料金の平均に思えるかもしれませんが、実は「施設の価値をどう認識してもらえているか」を表す重要な数値です。閑散期でも高単価で販売できていれば、価格に見合う価値があると認識されている可能性が高く、ブランド力や商品力が反映されていると考えられます。逆に繁忙期に安く売ってしまうと、大きな機会損失につながります。
計算方法
ADR = 宿泊売上 ÷ 実際に販売された客室数(稼働客室数)
ADRを上げるための工夫
・記念日やワーケーションなど、付加価値のあるプランをつくる
・食事や体験と組み合わせたパッケージ販売
・OTAに依存せず、自社予約での販売力を強化
・繁忙期は需要に応じた柔軟な価格設定
OCC(Occupancy Rate)とは? ― 客室稼働率
OCCってなに?
OCCは「どれくらい部屋が売れているか」を示す稼働率です。言い換えれば、施設の集客力や販売の成果を表す数字。稼働率が低いということは、そもそも「選ばれていない」可能性があるということです。
計算方法
OCC(%)= 実際に販売された客室数(稼働客室数) ÷ 販売可能客室数 × 100
稼働率を上げるには?
・OTA・自社サイト・旅行会社など、複数チャネルでの販売
・早割・直前割など、時期に応じた価格施策
・団体や長期滞在など、ニーズ別プランの強化
・SNS広告や検索連動広告で認知・誘導を図る
気をつけたいポイント
稼働率を上げたいからといって、むやみに値下げをすると逆効果になることがあります。客室単価(ADR)を下げることで、たとえ部屋数が多く売れ、稼働率(OCC)が高くなっても、最終的に得られる収益額が目標から下がってしまう可能性があるためです。稼働率と単価のバランスを取ることが、収益最大化の鍵となります。
RevPAR(Revenue Per Available Room)とは?
RevPARってどんな意味?
RevPAR(Revenue Per Available Room)とは、「販売可能な全客室1室あたりが、1日でどれだけの収益を生み出しているか」を示す数値です。つまり、空室を含めた全体の収益性を測る指標であり、ホテルのパフォーマンスを総合的に評価する際に重要とされます。
RevPARは、ADR(平均客室単価)とOCC(稼働率)を掛け合わせて算出されるため、単価と稼働のバランスが取れていないと高くなりません。
計算方法
RevPAR = ADR × OCC
※OCCは「0.8(=80%)」のように小数で表す必要があります。
RevPARを上げるには?
・繁忙期には需要に応じて強気の価格を維持しつつ、販売機会を逃さないよう在庫管理
・閑散期には稼働率を高めるキャンペーンや団体需要の取り込み
・朝食や部屋アップグレードなど、アップセル・クロスセルによる客単価の引き上げ
・チャネルごとの収益性を分析し、高収益チャネルに注力する
実務で扱うには
日別やチャネル別にRevPARを分析することで、売上の好調な要因や改善点を明確化でき、次の販売戦略に的確に反映させることができます。
ホテル・宿泊施設専用レベニューマネジメントシステム「D+」
「重要なのは分かっているけれど、忙しくて追いきれない」「競合の価格や市場の動きまで手が回らない」──そんな悩みを持つ施設におすすめなのが、レベニューマネジメントツールの「D+」です。
主な機能と特徴
主要データをリアルタイムに可視化
ADR・OCC・RevPARなどの主要数値を自動で集計・表示。
需要を予測して先手を打てる
過去の実績や傾向からAIモデルを構築し、未来の重要予測から最適価格を算出。
競合料金も収集し、最適価格の算出に反映
周辺施設の価格動向を自動取得し、柔軟に対応できます。
価格の反映作業も自動化
レベニュー業務を代わりに請け負うことで、大幅な業務時間の削減も可能です。
データに基づいた施策がスピーディーに実行できるようになり、現場の判断力と収益力を強化します。
まとめ
ADR・OCC・RevPARは、ホテルや旅館経営の「今」を正しく理解し、「これから」を考えるうえで欠かせない3つの視点です。
それぞれの意味やつながりを押さえ、数値をしっかりと活用できれば、ブレのない戦略が立てられます。
「数字が見えることで、現場の判断が早くなる。利益が残ることで、次の投資ができる。」
そのサイクルをつくる第一歩として、D+の導入もぜひ検討してみてください。