
はじめに|「売上はあるのに利益が残らない」その原因はADRにあり?
ADR(平均客室単価)は、宿泊業における基本中の基本ともいえる収益指標です。
日々のレベニューマネジメントでも常に目にする数字ですが、ふと「自分のホテルのADRは高いのか、低いのか?」「他施設と比べてどうなのか?」と疑問に思ったことはありませんか?
ADRは単価の高さを示すだけでなく、販売戦略の健全性を測るヒントにもなります。ただし、ADRだけに注目しすぎると、OCC(稼働率)やRevPARとのバランスを見誤るリスクにも。
本記事では、ADRの正しい定義・計算方法はもちろん、OCCやRevPARとの関係、よくある誤解、実践的な活用法など、現場で使える視点でわかりやすく整理しました。
「数字を見ているだけで終わってしまっている」ーそんな現状を変えたい方に、ぜひお読みいただきたい内容です。
ADR(Average Daily Rate)とは? ― 客室平均単価
ADRとは?|売上単価の妥当性を測る指標
ホテル業界における「ADR(Average Daily Rate)」は、客室1室あたりの平均販売価格を示す重要な指標です。宿泊事業者にとっては収益性を評価する際に欠かせない数字であり、価格戦略や収益管理(レベニューマネジメント)においても中核的な役割を果たします。
一般的に、ADRは「売上合計金額 ÷ 販売客室数」で算出されます。宿泊予約サイトや社内ダッシュボードなどでもよく使われるこの数値は、以下のように定義されます。
ADR = 客室売上 ÷ 販売済みの客室数
たとえば、ある1日の客室売上が120万円で、販売された客室数が30室だった場合、ADRは「40,000円」となります。
ADRの目的と活用シーン
ADRの数値を見ることで、「どれくらいの単価で客室が販売されているのか」を把握することができます。
価格戦略の妥当性を評価したり、閑散期・繁忙期の価格調整に活かしたりと、活用シーンは多岐にわたります。
特に以下のような場面で重要な指標となります:
・価格改定の効果測定
・他ホテルとのベンチマーク比較
・ADRを保ちながら稼働率(OCC)を上げる施策の検討
・RevPAR(販売可能客室1室あたりの売上)の算出に利用
ADRと他の指標(OCC・RevPAR)との違い
ADRと混同されやすい指標に、稼働率(OCC)とRevPARがあります。それぞれの違いを理解することで、ホテル経営の分析力がより深まります。
指標 | 意味 | 計算方法 |
---|---|---|
ADR(Average Daily Rate) | 平均客室単価 | 客室売上 ÷ 販売済みの客室数 |
OCC(Occupancy rate) | 稼働率 | 販売客室数 ÷ 総客室数 |
RevPAR(Revenue per Available Room) | 販売可能客室1室あたりの売上 | ADR × OCC(%) |
ADRは単価の視点、OCCは稼働の視点、RevPARは単価×稼働の総合指標と言えます。
よくある誤解:ADRに関する3つの勘違い
ADRの運用や評価において、以下のような誤解がよく見られます。誤った認識のままだと、価格戦略を見誤る可能性があるため注意が必要です。
●誤解①「ADRを上げれば、利益も上がるはず」
必ずしもそうとは限りません。価格を上げすぎると予約が減って稼働率(OCC)が下がり、結果として売上全体が減少することがあります。ADRだけでなくRevPARやOCCと合わせて判断することが重要です。
●誤解②「ADRが高い=ブランド力がある証拠」
一概には言えません。ADRは価格設定に依存するため、ブランド力というより「どの層にどの価格で販売しているか」の戦略によって変わります。顧客満足度やリピート率と合わせて評価すべき指標です。
●誤解③「ADRが下がったのは需要が落ちたせい」
需要だけが原因とは限りません。たとえば「直前割」や「OTAの価格調整」により意図的に安価な価格が反映された結果、ADRが下がることもあります。販売戦略やチャネルミックスの影響も見落とさないようにしましょう。
ADRを上げるには?具体的な施策例
ADRを向上させるには、単に価格を上げるのではなく、「顧客にとって価格に見合った価値を提供すること」が重要と考えられます。以下のような施策が効果的です。
・ハイシーズンの価格設定見直し(需給バランスに応じた料金戦略)
・客室タイプのアップセル・クロスセルの強化
・特典付きプランの追加(朝食付き、レイトチェックアウトなど)
・OTA(予約サイト)ごとの料金の最適化(チャネルマネジメント)
また、直販比率の向上もADRアップにつながることが多く、公式サイトでの限定価格や特典も有効な施策です。
まとめ|ADRを理解し、戦略的な価格設定を
ADR(平均客室単価)は、ホテルの収益管理における基本指標のひとつです。稼働率やRevPARと組み合わせて分析することで、戦略的かつ柔軟な価格設定が可能になります。
「価格を上げて単価を重視するか」「稼働率を優先して売上を確保するか」―そんな判断に迷う場面では、ADRが意思決定のヒントとなるでしょう。
弊社が提供するホテル・宿泊施設向けレベニューマネジメントシステム「D+」を導入すれば、ADRや稼働率のデータをもとに、日々の客室料金を最適化し、RevPARの最大化を図ることができます。
さらに、煩雑になりがちな価格調整やデータ分析の業務を自動化し、現場の業務効率化にも貢献します。
ぜひ、「D+」で収益管理の質を一段引き上げてみませんか?